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広島高等裁判所岡山支部 昭和25年(ネ)36号 判決 1952年4月24日

岡山市西中山下七七番地の一

控訴人

宇野春夫

右訴訟代理人弁護士

吉岡栄八

同市弓之町

被控訴人

岡山税務署長

白神素臣

右指定代理人

佐田整速

米沢久雄

飯島房夫

那須輝雄

服部賀寿雄

西本寿喜

植野久満太

北山基

右当事者間の昭和二五年(ネ)第三六号所得税不当課税取消請求控訴事件について当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴はこれを棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は原判決を取り消す。被控訴人のなした控訴人の昭和二十二年度の所得金額を三十万円、所得税額を六万五千百三十円とする決定を取り消す。訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とするとの判決を求め、被控訴指定代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張は控訴代理人において控訴人は審査の請求をしたのに拘らず政府において決定をしないのであつて控訴人に出訴期間の解怠はないと述べた外いずれも原判決の事実摘示と同一であるからこれを引用する。

証拠として控訴代理人は甲第一乃至第四号証を提出し原審並に当審における証人山本進、三垣博の各証言、当審における控訴人の本人訊問の結果を援用し、乙号各証の成立を認め、被控訴指定代理人は乙第一号証のイ、ロ、ハ、ニ同第二号証を提出し当審における証人畠瀬喜久次、高畠正夫、岡本武夫の各証言を援用し、甲第一、二号証の成立を認め、同第三、四号証の成立は不知と述べた。

理由

控訴人が昭和二十二年十二月十五日附の予定納税額更正決定通知書を以て被控訴人より同年度における所得金額を三十万円納税額を十六万五千百三十円と更正する旨の通知を受けたことは当事者間に争のないところである。しかるに旧所得税法第四十九条によれば政府のなした所得金額若しくは所得税額の更正決定に対し納税義務者は通知を受けた日より一ケ月内に審査の請求をなすべきものであるところ、控訴人は昭和二十三年一月十五日審査の請求をした旨主張するけれども、右主張に副う原審並に当審における証人山本進の証言及び当審における控訴本人の供述は後記証拠と対比すれば信用できない。

右各供述にして措信し得ない以上当審における証人三垣博の証言は右主張事実を認むべき適切な証拠となすことはできない。他に控訴人の右主張事実を認むべき証拠はなく、却て成立に争のない乙第一号証のイ、ロ、ハ、ニ及び当審における証人畠瀬喜久次の証言をあわせ考えれば控訴人は前記所定の期間内に審査の請求をしなかつたものであることを認めることができる。そして旧所得税法第五十一条によれば所得金額の更正決定を違法であるとしてその取消を求める訴は審査の決定を経た後でなければ提起することはできない。又審査の請求をしなかつたことについて正当な事由のあつたこともこれを認めるに足る証拠はない。従つて本訴は訴提起の要件を欠くものであるから爾余の争点について判断するまでもなく既にこの点において不適法として却下を免れない。原判決は別な理由ではあるが本訴を不適法として却下したのであるから結果において正当であり、本件控訴はその理由がない。よつて民事訴訟法第九十五条第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

(判事 林観一 判事 幸田輝治 裁判長判事植山日二は転任につき署名捺印することができない。判事 林観一)

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